痛みの科学⑤ ごきげんな気持ちと痛みの関係
関上 寅之輔上級Conditioning Coach
前回は「感情と情動」に触れながら、痛みにはそれらが深く関わっているという内容でした。
今回はその続きとして、「どうやって痛みをコントロールするか?」について、より具体的に考えていきましょう。
◼️痛みはどこで“感じる”のか?
痛みは、ただ単に「ケガや炎症の情報が脳に届く」という画一的な流れで起こるわけではありません。
仮に痛みの情報が脳みそに届いたとしても、その痛みの情報を“抑えるしくみ” や “強めるしくみ” などが存在し、私たちの気分や思考によって痛みの感じ方が変わることがあります。
例えば、おなじ脳みその中でも、「前頭葉(どちらかというと新しい脳)」と呼ばれる部分は、比較的理性的な判断や意思決定を司る領域であり、痛みの情報が入ってきたとき、単なる「痛い」という感覚を超えて「これは大丈夫」「なんとか対策できそう」などと認知・評価する役割も担っています。
逆に、大脳辺縁系(どちらかというと古い脳)は、比較的強い喜びや怒り、悲しみなどの情動を司る部分であり、興奮や不安、恐怖などが高まると、交感神経が過剰に働き、痛みの信号を増幅してしまうことがあります。
※詳しくはこちらのコラムで!
◼️痛みを抑えるしくみ“下行性抑制”
痛み信号は、痛みを感じている部分から神経を通って脳みそに伝わりますが、実は脳みそから「痛みを抑える」 仕組みが働くこともあります。
これを“下行性抑制系”(または下行性鎮痛系)と呼びます。
※下行性抑制系と聞くと難しく感じますが、「系」は「システム」と訳すことができます。
つまり「脳みそから身体におりてくる痛みを抑えるシステム」という意味です!こちらのコラムで復習しましょう!
◼️「ごきげんな感情」で痛みをやわらげる?
多少痛みがあったとしても私は大丈夫!という感じで、どちらかというと理性的な感情である「ごきげんな感情」でいるように心がけることは、脳みその中でも比較的理性的感情を司る前頭葉の働きを高め、辺縁系の過剰な興奮を抑えることに繋がります。
それによって、痛みの閾値を上げる(=痛みを感じにくくなる)ことができる可能性があります。
逆に、痛みを意識しすぎてしまったり、必要以上にネガティブな感情を持ちすぎてしまうことは、痛みの閾値を下げてしまう可能性があるということです。
「痛い」→「必要以上にネガティブな感情」→「より痛く感じる」→「より不安な気持ち」→「より痛みを感じる」・・・というループが発生する要因にもなります。
◼️痛みはコントロールできる?
痛みを完全に無くす魔法の方法を見つけるのは難しいですが、痛みの閾値(どれくらいの刺激で痛みを感じるか)はコントロールできる可能性があります。
痛みは、脳内の評価や情動状態によって変化します。
「前頭葉の冷静な判断」「大脳辺縁系の過度な興奮抑制」「下行性抑制の活性化」というキーワードを押さえておくと、自分の痛みの感じ方を客観的に見つめやすくなるのではないでしょうか?
もちろん、痛みを気にしないようにしましょう。
多少痛くても大丈夫です。ということではありません。
痛みがある場合は、無理をせずに医療を頼りましょう!
人は、自分が理解できないものに恐怖を感じるという話をよく聞きます。
古代の人々が雷や嵐を神の怒りであると恐れたり、意図や行動を予測できない幽霊やゴキブリや鳥(笑)を怖いという人もいると思います。
だとするならば、痛みに関するわからないことを知っていくことも、痛みのコントロールの一つになるのではないかと思った次第です。
これからも一緒に身体や痛みについての理解を深めていきましょう!
END:2025.02.14
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